●ザ・シンフォニー名曲コンサートVol.32
土曜、日曜のお昼に行なわれる公演を「マチネ」と呼んだりしますが、詳しい意味はよく知りません。今回は、祝日の昼公演ということで、“ホリディ・マチネ”といったところでしょうか。
クラリネットは、1840年頃に、フランスで開発された一般に「ベーム式」といわれるものが、世界中に広まりました。その一方で、「ドイツ式」のクラリネットは、伝統的なクラリネットの仕組みを、守りながら改良を重ねてきたのですが、合理性を追求したベーム式の画期的なシステムの楽器が、より高度な奏法あるいは表現の可能性を求める意味でも多く使われているようで、現在では、ドイツ式は、ドイツとオーストリアという限られた範囲で使われているだけなのだそうです。
マイヤーさんの楽器は、ドイツ式を使うのだそうです。また、モーツァルトでは、“バセット・ホルン”という、普通のクラリネットよりやや大きく丈も長い楽器で、5度低い音程が出せる古典的なクラリネットを使用していました。バゼット・ホルンは、なかりの体力とテクニックが要求される楽器ではないかと察しますが、マイヤーさんの苦にしない演奏に、逞しさのようなものを感じ、深い感動を受けました。何れにしても、“木”の温もりを感じる音色だったと思います。
後半のプログラムでは、ベートーヴェンの不朽の名作「運命」ですが、何時に聴いても、いい曲です。第一楽章の取っ掛かりから、指揮者の小泉さんが、両手を使って、縦に大きく振るタクト裁きは、とても、ダイナミックな音作りを意識した演奏のようで、聴いていて、音楽に引き込まれる勢いを感じながら、冷静に、しかも沈着に聴くことを意識して鑑賞させてもらいました。
有名なのは、第1楽章ですが、個人的には、第2楽章をどう表現してくれるのかが、この曲のライブを聴く時の、“聴きどころ”ではないかと思います。最初に、チェロ群が奏でる比較的ゆったりとした、長いメロディが、どんどん形を変え、楽器を変え、音楽が色彩豊かに表現されていきます。この楽章に堪能できれば、私としては、大満足です。
劇的な展開を予想させる第3楽章を経て、いよいよ最終楽章に入るのですが、ここでは、浴びるように聴き入りたいものです。個人的好みで言えば、金管楽器が“でしゃばらず”に、厚みの有るアンサンブルを繰り広げてくれると大変有り難いです。
センチュリーは、ベートーヴェンにおいても、クリアな音色で、楽しませてくれました。フレンチ・ホルンもよく頑張ってくれています。また、指揮者の小泉さんの音楽表現と、センチュリーの演奏は、とてもよく似合っているように思います。作曲者、演奏家、指揮者の三面関係が素晴らしいと、第4の関係者である聴衆は、とても感動する時間を過ごせると思います。
ザ・シンフォニー名曲コンサートVol.32『美しき伝説(レジェンド)』
1998年9月15日午後2時開演
ザ・シンフォニーホール(大阪市)
管弦楽:大阪センチュリー交響楽団
指揮者:小泉和裕
ソリスト:ザビーネ・マイヤー(クラリネット)
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲 Op.77
モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67「運命」
