2000年03月25日

●女神(ミューズ)との出逢い

東急「渋谷」駅(東京)から約40分。新玉川線が途中で田園都市線に継続して、「青葉台」という駅に着きます。駅前にある「青葉台東急百貨店」の5Fに「フィリアホール」があります。このホールは、アイボリーの高い天井が印象的で、なだらかな傾斜の床や1階の壁は、木目調。そして座席は、列がゆったりとした間隔を確保していてとても音楽を聴きやすくステージも見易い大変良い環境を提供してくれています。また、このホールでは、土曜ソワレシリーズ「女神(ミューズ)との出逢い」というタイトルで、毎週土曜日の夜、若く有望な才能を持った女性演奏家による、華麗なるリサイタル・シリーズを行なっています。今回、その第81回目として、藤井香織(フルート)さんが登場したわけです。
私が、彼女の存在を知ったのは、「バンドピープル(1995年11月号P94)」という吹奏楽雑誌でした。当時16歳、高校2年生の彼女が、米フロリダ州オーランドでのNFA主催フルート・コンベンション・コンクールのハイスクール・ソリスト部門で第2位(このコンクールでの日本人最高位)に入賞し、伴奏のフィリップ・モルさんとツーショットの写真入りで掲載されていた14行ほどの記事が掲載されていました。一流アーティストの「たまご」ってこういう姿なんだろうなという印象が強く残っていました。その後の彼女は、数々のコンクールで最年少での栄冠を獲得されるなどの輝かしい経歴を積まれ、いよいよ、待望のファーストCDが、1999年9月22日にリリースされたので再度注目しました。
さて、生の演奏を聴ける機会はないのかと調べているうちに、やっとこのプログラムに突き当たったわけですが、リサイタルだけを目的に行くには、大阪から横浜は遠いし、仕事も3月の繁忙時期に入っていてプライベートでのオーバーワークには多少の躊躇がありましたけど、思い切って聴きに行く事にしました。 演奏会前半のプログラムについては、特に、素晴らしい技術力と美しい音色など、随所に光る才能を見せ付けてくれて、その演奏に圧倒されました。緊張感の漂う序盤からでも、物怖じしないというか、プロフェッショナルな風格が漂うというか、堂々としていて、その息遣いも立派でとても好感の持てる演奏でよかったと思います。特に、実姉の藤井裕子さんのピアノ伴奏は、とても相性が良いと言えるのではないでしょうか。
後半のプログラムでは、CDにも収録されていて、注目の「無伴奏チェロ組曲」でしたが、とにかく、タイトルのとおり、この曲は、チェロのために書かれた作品ですが、もはや、フルートの為に書かれたものであるかのような錯覚に陥るほどに無理なく、完成度の高い作品に仕上がっていて、それが、CDを聴いても充分理解できますが、生の演奏では、随所にフルート演奏での見せ場があって、あらためて、このアレンジがとても素晴らしい試みだったと思い知らされました。また、ヴィドールの組曲での注目は、第3楽章でした。前半ゆっくりのメロディーでの清潔感溢れる唄いまわしに感心しました。ただ、その後半に差し掛かる少し山場的な部分に早い動きで連符があるのですが、これは無理な素人考えかも知れませんが、個人的趣味では、もう少し長い息で柔らかい音を注文したかったと思います。ただ、この曲のこの楽章が、今日の演奏会の全てを表していたと思えるほど、とにかく若々しく誠実な音楽がこのホール全体に響き渡っていました。
その他に、このホールで感心した出来事は、聴衆の反応でした。良い演奏には、惜しみない拍手を贈る。こういう習慣が、良い文化を育むものではないかと思います。こういう素晴らしい聴衆を前にしたせいか、後半プログラムからアンコールの最後まで、演奏者もすごくノッテいたと思うし、ホール全体が今日の音楽会の雰囲気を盛り上げていたように感じました。おかげで、ここが私にとって、また今度訪れてみたいホールの一つになりました。
最後に藤井香織さんへのメッセージとして、「また聴きたい」。そう思わせてくれた素晴らしい演奏会でした。
藤井香織さんの使用楽器については、村松楽器販売株式会社まで。

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2000年03月04日

●来日公演「絢爛」

今となっては、このコンサートの一聴衆として、参加できた事を感謝しています。職場の師匠には、いつもCDショップに「持ち帰り自由」でおいてある「ザ・モーストリー・クラシック」という、無料(※注意:現在は有料)にしては読みどころの多い雑誌を毎月号ごとに自分の分をもらうついでに、もう一冊を渡しています。この雑誌がきっかけで、先生は、ご家族の方とNHK交響楽団の公演を奈良県まで聴きにいかれたそうで、今度は、是非一緒にと先生の奥様が、このコンサートのチケットを買ってくださいました。とても、ラッキーな出来事でした。当日は、雨の中を先生ご夫妻と3人で電車タクシーを乗り継いで会場にでかけました。
ヨーロッパの気候は、温暖で乾燥しているのと比較して、日本は、温暖ではありますが湿気が多いようです。乾燥した冬場の演奏会は、弦楽器には適した?時期なのかもしれません。しかし、雨に降られてはどうしようもなかったかなと思いつつも、コンサートは、はじまりました。
 インド人指揮者が指導するユダヤ人演奏家によるイスラエルの楽団が、ロシアの作曲家による名曲を紹介するという今回のプログラムは、この演奏会に付けられた“絢爛(けんらん)”というタイトルの通り、期待感が高いものでした。ベルリンやウィーンといった有名な海外オーケストラの演奏会は、即日完売というチケットですが、比較的認知度が低かったことが、私たちには幸いして、この演奏会のチケットが残っていた事には、とても感謝したいと思います。
 “シェエラザード”は、各パートのソロを担当する奏者は、自分の出番ではここぞとばかりに唄い、TUTTI(全体合奏部分)では、特に金管低音楽器がド迫力の演奏を繰り広げました。また、ティンパニーの好演には、とても意識が吸い寄せられました。演奏後、指揮者が、ティパニー奏者を立たせて、拍手を贈っていましたが、聴衆も大きな拍手をもって、それに共感していました。
 この曲は、作曲者リムスキー=コルサコフが残した傑作のひとつでもあるのですが、4つの楽章で構成される交響曲の体裁を持たせながらも、ヴァイオリンソロの美しい旋律が魅了する協奏曲という印象が強く、終始、エキゾチックに展開する音楽は、とても聴き応えがあります。
 ショスタコービィチが残した交響曲の中でも、この“革命”は、只今の多くのオーケストラによって、採り上げられる名曲です。彼が生きた時代は、音楽表現が“政治犯”に、繋がってしまう難しい政治的背景をはらんでいた訳で、この様な名曲が、世に出せたのは、ある意味で、幸運な事だったと云えそうです。
 第1楽章では非常になだらかな山場をつくり、続く静かな楽章では、繊細なアンサンブルが心地よく流れます。特に第3楽章でのハープの調べは、その繊細さを引き立てていたと思います。最終楽章は、迫力ある金管楽器の響きが伴い、大きく盛り上がる展開となります。ベートーヴェンの交響曲第5番“運命”の形式を備えた分かりやすい交響曲と解説されるように、とても聴きやすい音楽でした。
 アンコールは3曲ありました。最初は、リムスキー・コルサコフの歌劇「ホヴァンシチナ」より前奏曲だったらしいです。初めて聴いたのですが、もうどんな曲だったか忘れました。それに、メータさんが、ムソグルスキーと言ったとばかり思っていました。
 続いて、チャイコフスキー「白鳥の湖」(メータさんが日本語で紹介)よりワルツでした。鳴り止まない拍手と聴衆のスタンディング・オベイションに、メータさんが、アンコール3曲目(これで最後)の、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」よりタイボルトの死を、演奏することを告げても立ったままのお客を指差して、「Re-back to seat」とか何とか、英語で注意(ウィット?)する一幕もあったり、とにかく盛り上がっていました。

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