2003年06月22日

●炎の五番!

あのエネルギーは、何処から来るのかと、何時も感心させられるコバケンさんこと、小林研一郎さんが指揮をする演奏会は、あの“うなり”を期待しては、また演奏会に足を運んでしまいます。ハンガリー国立は、数年ぶりに聴くことになりましたが、さて、今回の、マンチックで、ダイナミックなプログラムでは、私たち聴衆を、どのくらい魅了してくれるのか、とても楽しみな構成となっています。
なお、このオーケストラに期待するのは、演奏全体としての及第点ではなく、所々に“光る表現”です。ハンガリーのオーストラならではの、フレーズの取り方や、音形、音長の処理が、心に残れば、かなり満足できるといえます。
さて、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」は、マエストロの指示が、的確に伝わるようにか?静か目に、ややスローに始まりました。今回の来日公演ツアーは、20日間で15公演と過密で、しかも沢山のレパートリーを、こなさなければならないという中、私の憶測ですが、この楽曲「運命」には、あまり冒険しないという感じだったのかもしれません。先日、別の国内オーケストラで聴いた、マエストロ指揮の、ベートーヴェン第7番でも、ややゆっくりテンポだったので、もしかすると、ベートーヴェンの楽曲に対するマエストロのテンポがあるのかも知れませんが、私には、よく分かりません。また、日本の気候のためか、弦楽器の響きが、やや重く感じました。
第1楽章では、最初のフレンチホルンは、うまくいかなかったけど、全体として、「運命の動機」は、随所にインパクトがある好演奏だったと思います。第2楽章は、バリエーションが楽しめる、私が、この楽曲の中で、最も大好きな楽章です。ところどころ、聴こえて欲しい音が、耳に届いてこなかったりしましたが、終始、丁寧な演奏だったと思います。第3第4楽章では、スピードに乗せる部分と、そうでない部分の、メリハリを楽しませてくれました。コバケンさんが指揮する演奏会は、マエストロのタクト、そして“うなり”に、演奏家と聴衆が、魅せられる独特の世界があり、それが楽しみで何度も足を運ぶ、ファンも多いようです。 後半のプログラムは、チャイコフスキーの交響曲第5番でした。これは、運命とは、対照的に、やや速いテンポを保ちながら、展開していきました。第1楽章冒頭のクラリネットと、第2楽章のフレンチホルンは、それぞれに、美しい音色を聴かせてくれました。第3楽章でのストリングスは、緊張と緩和を楽しませてくれました。終楽章については、コバケンさんの素晴らしいパフォーマンスに、会場全体が、乗っていった感じがします。また、金管楽器は、コンディションの調整も大変かと思いますが、しっかり、鳴らしていたと思います。総じて、後半のプログラムは、良い迫力を楽しませてくれました。
アンコールは、J.S.バッハ作曲:管弦楽組曲第3番の第2曲《アリア》いわゆる「G線上のアリア」、アイルランド民謡「ダニーボーイ」と、続けて演奏されました。アリアは、先日の第6番「悲愴」の後に聴いたのと、本日の第5番の後に聴いたのとでは、全く違う曲を聴いたという印象でした。もちろん、違う演奏家によるものだからかも知れませんが。
アンコール2曲目の後、コバケンサンの、ちょっとしたお喋りが入り、ブラームス作曲:「ハンガリー舞曲集」より第5番。さらに、コバケンさんの演出ですが、今回は、ラスト30秒アンコールではなく、ベルリオーズ作曲:「ラコッツィ行進曲」で、スタンディング・オベイションにて、終焉となりました。

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2003年06月19日

●来日公演

台風第6号が、九州地方に接近の折ですが、午後の飛行機にて、関西空港より、羽田空港へと向かいました。私が利用した飛行機も、関西空港への到着が遅れたため、定刻より遅れての発着となりました。羽田到着後は、予定通り、カレーミュージアムにて、早めの夕食をとろうと、関内(横浜市)を経由して会場に向かうことにしていたのですが、ここでまた、不運にも、JR線のダイヤが乱れる事態に遭遇してしまい、結局、カレーは、食べられず、自宅で作る用のカレー粉を買うくらいの時間しか取れませんでした。
今回は、どうも思うように行動できませんでした。
今回のお目当ての第一は、勿論ソリストにあるのですが、「悲愴」を、“お腹一杯”に、聴いてみたいというのも、楽しみのひとつでした。チケットは、4ヶ月前に遡り、先行販売で入手しましたが、この日が、大変待ち遠しくも、あっという間に、ここへ来たという感じがしないでもありません。
余裕を持たせて計画したはずの時間が、交通機関の停滞に、ことごとく食いつぶされていく中で、横浜~品川(京急)、品川~新宿(JR山手線)、新宿~初台(京王新線)と、電車を乗り継いで、コンサートホールへのファイナルアプローチについてだけは、開演の午後7時より数分前に到着するという、予定通りに行けました。公演パンフレット(有料)を購入し、手荷物をクロークに預けて、自分の座席に向かいました。 今回の分単位の行動は、前半のように、予定が狂う中では、動揺しますが、後半のように、予定通りの中では、けっこう余裕が有ります。そのため、ホールへ近付くに連れ、平静を取り戻していったため、“慌ただしかった”という感想は有りませんでした。
高い天井と、床や壁、座席などの素材に木を使用しているホール内は、清潔感があり、とても寛げる空間という印象を受けました。このホールへは、今回、初めて来たので、よく分かっていなかったのですが、座席は、S席4列11番ということで、やや前過ぎるのかな程度に思っていました。実際に座席に着いて、それが、前から2列目(4列なのに)の座席であることと知って、少し動揺しました。ちなみに、ステージは、見上げるほど高くなかったので平気でした。目の前にコンサートマスターが居るとうような座席位置のチケットを、自分で選ぶ機会は、滅多に無いなと思いながらも、演奏者に近い分、生音の臨場感が、より楽しめることくらいを期待しようと思いました。
前半のプログラム1曲目は、グリンカ作曲:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲です。指揮者は、特に、管弦楽をあおるような姿勢も見せていないし、演奏家の動きを見ていても、サラッと弾いているような感じがするのですが、この演奏には、大変迫力がありました。速いパッセージでは、弦楽器のまとまった響きが、清清しく感じられました。中間部のヴァイオリンチェロは、クリアな音色で、素敵なメロディーを奏でていたと思います。また、そのベースで刻まれるリズム感も、清潔な音楽の流れを感じさせてくれていました。
楽曲終盤の、6全音音階【解説によると、下行全音音階(悪魔のモティーフ)】を、高らかに響かせるトゥッティでは、それなりの盛り上がりが楽しめて、この管弦楽の演奏自体に、高い好感を持ちました。
2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲:ヴァイオリン協奏曲第1番です。渡辺玲子さんは、お花(スイレン?)の絵が沢山入った、シルクのような落ち着いた光沢が有るシックなドレスで、登場しました。
第1楽章は、なんとも退屈な流れの無い(有る?)メロディが、何ともいえない緊張感を持たせながら続くのですが、堅く重い雰囲気の中、美しく奏でるヴァイオリンソロの響きは、一層、際立っていたような気がしました。また、ミュートを使う場面でも、不安に感じる箇所など全く見当たらない、筋の通った演奏が楽しめました。管弦楽が、大変安定しているためかも知れませんが、ソリストは、視覚的なオーバーアクションも少なく、音そのものの表現を中心に、楽しませてくれました。
第2楽章は、作曲者特有のリズム感が、随所に見られるのですが、序盤、木管(ファゴットなど)のリズムをベースに、その上を、ヴァオリンソロが、強いアタックで、音を、鍵括弧で括ったように、印象付けながら展開していく部分では、とても心地よい音楽を楽しませてもらいました。
ヴァイオリンチェロ、バス、フレンチホルンなどが、勇まく重厚な音楽を聴かせながら始まる第3楽章は、大変格好良かったと思います。たっぷり聴き応えの有るカデンツァを経て、そのまま第4楽章へと続きました。アレグロ・コン・ブリオは、軽快なテンポで展開し、私見ですが、まるで、トンネルを抜けて、ひた走る特急列車の窓から景色を眺めているような、スリル感が楽しめました。
ソリスト、指揮者、管弦楽の三者が、良い均衡(各役割の中での信頼関係)を保っていて、こんなにスッキリした協奏曲の演奏は、久々に聴かせてもらったような気がします。
休憩が15分というのは、短くは無いのですが、遠隔地から出向いている私にとっては、できれば20分は欲しかったです。前半のプログラムの余韻に浸りながら、ゆっくりコーヒータイムを楽しむには、せめて、あともう5分の余裕があれば、大変有り難いと思うのでした。
後半のプログラムは、チャイコフスキーの交響曲第6番でした。第1楽章冒頭のファゴットは、とても美しかったと思います。また、自然なリズム感を保ちながら、あの変拍子を演奏された第2楽章は、“目から鱗”という感じがしました。第3楽章は、そこそこの迫力でした。贅沢な話しですが、この楽章は、もう少し、後ろの方で、金管楽器の響きを、まともに受けながら聴いてみたかったような気がしました。終楽章は、弦楽器が、とても美しくて感動しました。木管楽器が、私の位置からだと、ヴァイオリンの奏者群の向こうに隠れていて、軟らかい音量(p)での表現が、もう少しクリアに聴ければ、もっと楽しめたかも知れないと思うと、残念な気がしました。この楽曲の締めくくりは、静かに終わるのですが、俯き静止する指揮者とともに、演奏家、聴衆が、数秒の沈黙(黙祷?)の後、大きな拍手で、会場が、湧き上がりました。
アンコールは、J.S.バッハ作曲:管弦楽組曲第3番の第2曲《アリア》いわゆる「G線上のアリア」と、R.ワーグナー作曲:歌劇「ローエングリン」より第三幕への前奏曲でした。いろいろと楽しめた演奏会でした。
翌日は、金曜日でしたので、朝一番の飛行機にて、羽田空港より、関西空港に移動し、定刻9時には、普段通り出勤したことは、言うまでもありません。

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