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2003年06月19日

●来日公演

台風第6号が、九州地方に接近の折ですが、午後の飛行機にて、関西空港より、羽田空港へと向かいました。私が利用した飛行機も、関西空港への到着が遅れたため、定刻より遅れての発着となりました。羽田到着後は、予定通り、カレーミュージアムにて、早めの夕食をとろうと、関内(横浜市)を経由して会場に向かうことにしていたのですが、ここでまた、不運にも、JR線のダイヤが乱れる事態に遭遇してしまい、結局、カレーは、食べられず、自宅で作る用のカレー粉を買うくらいの時間しか取れませんでした。
今回は、どうも思うように行動できませんでした。
今回のお目当ての第一は、勿論ソリストにあるのですが、「悲愴」を、“お腹一杯”に、聴いてみたいというのも、楽しみのひとつでした。チケットは、4ヶ月前に遡り、先行販売で入手しましたが、この日が、大変待ち遠しくも、あっという間に、ここへ来たという感じがしないでもありません。
余裕を持たせて計画したはずの時間が、交通機関の停滞に、ことごとく食いつぶされていく中で、横浜~品川(京急)、品川~新宿(JR山手線)、新宿~初台(京王新線)と、電車を乗り継いで、コンサートホールへのファイナルアプローチについてだけは、開演の午後7時より数分前に到着するという、予定通りに行けました。公演パンフレット(有料)を購入し、手荷物をクロークに預けて、自分の座席に向かいました。 今回の分単位の行動は、前半のように、予定が狂う中では、動揺しますが、後半のように、予定通りの中では、けっこう余裕が有ります。そのため、ホールへ近付くに連れ、平静を取り戻していったため、“慌ただしかった”という感想は有りませんでした。
高い天井と、床や壁、座席などの素材に木を使用しているホール内は、清潔感があり、とても寛げる空間という印象を受けました。このホールへは、今回、初めて来たので、よく分かっていなかったのですが、座席は、S席4列11番ということで、やや前過ぎるのかな程度に思っていました。実際に座席に着いて、それが、前から2列目(4列なのに)の座席であることと知って、少し動揺しました。ちなみに、ステージは、見上げるほど高くなかったので平気でした。目の前にコンサートマスターが居るとうような座席位置のチケットを、自分で選ぶ機会は、滅多に無いなと思いながらも、演奏者に近い分、生音の臨場感が、より楽しめることくらいを期待しようと思いました。
前半のプログラム1曲目は、グリンカ作曲:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲です。指揮者は、特に、管弦楽をあおるような姿勢も見せていないし、演奏家の動きを見ていても、サラッと弾いているような感じがするのですが、この演奏には、大変迫力がありました。速いパッセージでは、弦楽器のまとまった響きが、清清しく感じられました。中間部のヴァイオリンチェロは、クリアな音色で、素敵なメロディーを奏でていたと思います。また、そのベースで刻まれるリズム感も、清潔な音楽の流れを感じさせてくれていました。
楽曲終盤の、6全音音階【解説によると、下行全音音階(悪魔のモティーフ)】を、高らかに響かせるトゥッティでは、それなりの盛り上がりが楽しめて、この管弦楽の演奏自体に、高い好感を持ちました。
2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲:ヴァイオリン協奏曲第1番です。渡辺玲子さんは、お花(スイレン?)の絵が沢山入った、シルクのような落ち着いた光沢が有るシックなドレスで、登場しました。
第1楽章は、なんとも退屈な流れの無い(有る?)メロディが、何ともいえない緊張感を持たせながら続くのですが、堅く重い雰囲気の中、美しく奏でるヴァイオリンソロの響きは、一層、際立っていたような気がしました。また、ミュートを使う場面でも、不安に感じる箇所など全く見当たらない、筋の通った演奏が楽しめました。管弦楽が、大変安定しているためかも知れませんが、ソリストは、視覚的なオーバーアクションも少なく、音そのものの表現を中心に、楽しませてくれました。
第2楽章は、作曲者特有のリズム感が、随所に見られるのですが、序盤、木管(ファゴットなど)のリズムをベースに、その上を、ヴァオリンソロが、強いアタックで、音を、鍵括弧で括ったように、印象付けながら展開していく部分では、とても心地よい音楽を楽しませてもらいました。
ヴァイオリンチェロ、バス、フレンチホルンなどが、勇まく重厚な音楽を聴かせながら始まる第3楽章は、大変格好良かったと思います。たっぷり聴き応えの有るカデンツァを経て、そのまま第4楽章へと続きました。アレグロ・コン・ブリオは、軽快なテンポで展開し、私見ですが、まるで、トンネルを抜けて、ひた走る特急列車の窓から景色を眺めているような、スリル感が楽しめました。
ソリスト、指揮者、管弦楽の三者が、良い均衡(各役割の中での信頼関係)を保っていて、こんなにスッキリした協奏曲の演奏は、久々に聴かせてもらったような気がします。
休憩が15分というのは、短くは無いのですが、遠隔地から出向いている私にとっては、できれば20分は欲しかったです。前半のプログラムの余韻に浸りながら、ゆっくりコーヒータイムを楽しむには、せめて、あともう5分の余裕があれば、大変有り難いと思うのでした。
後半のプログラムは、チャイコフスキーの交響曲第6番でした。第1楽章冒頭のファゴットは、とても美しかったと思います。また、自然なリズム感を保ちながら、あの変拍子を演奏された第2楽章は、“目から鱗”という感じがしました。第3楽章は、そこそこの迫力でした。贅沢な話しですが、この楽章は、もう少し、後ろの方で、金管楽器の響きを、まともに受けながら聴いてみたかったような気がしました。終楽章は、弦楽器が、とても美しくて感動しました。木管楽器が、私の位置からだと、ヴァイオリンの奏者群の向こうに隠れていて、軟らかい音量(p)での表現が、もう少しクリアに聴ければ、もっと楽しめたかも知れないと思うと、残念な気がしました。この楽曲の締めくくりは、静かに終わるのですが、俯き静止する指揮者とともに、演奏家、聴衆が、数秒の沈黙(黙祷?)の後、大きな拍手で、会場が、湧き上がりました。
アンコールは、J.S.バッハ作曲:管弦楽組曲第3番の第2曲《アリア》いわゆる「G線上のアリア」と、R.ワーグナー作曲:歌劇「ローエングリン」より第三幕への前奏曲でした。いろいろと楽しめた演奏会でした。
翌日は、金曜日でしたので、朝一番の飛行機にて、羽田空港より、関西空港に移動し、定刻9時には、普段通り出勤したことは、言うまでもありません。

ワールド・オーケストラ・シリーズ2003-2004/富士通コンサートシリーズ
サンクトペテルブルク交響楽団来日公演

期日:2003年6月19日午後7時開演
会場:東京オペラシティ・コンサートホール(東京都新宿)

管弦楽:サンクトペテルブルク交響楽団
指揮者:アレクサンドル・ドミトリエフ
ソリスト:渡辺玲子(ヴァイオリン)

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」 序曲
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 Op.77
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 Op.74 「悲愴」