●炎の五番!
あのエネルギーは、何処から来るのかと、何時も感心させられるコバケンさんこと、小林研一郎さんが指揮をする演奏会は、あの“うなり”を期待しては、また演奏会に足を運んでしまいます。ハンガリー国立は、数年ぶりに聴くことになりましたが、さて、今回の、マンチックで、ダイナミックなプログラムでは、私たち聴衆を、どのくらい魅了してくれるのか、とても楽しみな構成となっています。
なお、このオーケストラに期待するのは、演奏全体としての及第点ではなく、所々に“光る表現”です。ハンガリーのオーストラならではの、フレーズの取り方や、音形、音長の処理が、心に残れば、かなり満足できるといえます。
さて、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」は、マエストロの指示が、的確に伝わるようにか?静か目に、ややスローに始まりました。今回の来日公演ツアーは、20日間で15公演と過密で、しかも沢山のレパートリーを、こなさなければならないという中、私の憶測ですが、この楽曲「運命」には、あまり冒険しないという感じだったのかもしれません。先日、別の国内オーケストラで聴いた、マエストロ指揮の、ベートーヴェン第7番でも、ややゆっくりテンポだったので、もしかすると、ベートーヴェンの楽曲に対するマエストロのテンポがあるのかも知れませんが、私には、よく分かりません。また、日本の気候のためか、弦楽器の響きが、やや重く感じました。
第1楽章では、最初のフレンチホルンは、うまくいかなかったけど、全体として、「運命の動機」は、随所にインパクトがある好演奏だったと思います。第2楽章は、バリエーションが楽しめる、私が、この楽曲の中で、最も大好きな楽章です。ところどころ、聴こえて欲しい音が、耳に届いてこなかったりしましたが、終始、丁寧な演奏だったと思います。第3第4楽章では、スピードに乗せる部分と、そうでない部分の、メリハリを楽しませてくれました。コバケンさんが指揮する演奏会は、マエストロのタクト、そして“うなり”に、演奏家と聴衆が、魅せられる独特の世界があり、それが楽しみで何度も足を運ぶ、ファンも多いようです。
後半のプログラムは、チャイコフスキーの交響曲第5番でした。これは、運命とは、対照的に、やや速いテンポを保ちながら、展開していきました。第1楽章冒頭のクラリネットと、第2楽章のフレンチホルンは、それぞれに、美しい音色を聴かせてくれました。第3楽章でのストリングスは、緊張と緩和を楽しませてくれました。終楽章については、コバケンさんの素晴らしいパフォーマンスに、会場全体が、乗っていった感じがします。また、金管楽器は、コンディションの調整も大変かと思いますが、しっかり、鳴らしていたと思います。総じて、後半のプログラムは、良い迫力を楽しませてくれました。
アンコールは、J.S.バッハ作曲:管弦楽組曲第3番の第2曲《アリア》いわゆる「G線上のアリア」、アイルランド民謡「ダニーボーイ」と、続けて演奏されました。アリアは、先日の第6番「悲愴」の後に聴いたのと、本日の第5番の後に聴いたのとでは、全く違う曲を聴いたという印象でした。もちろん、違う演奏家によるものだからかも知れませんが。
アンコール2曲目の後、コバケンサンの、ちょっとしたお喋りが入り、ブラームス作曲:「ハンガリー舞曲集」より第5番。さらに、コバケンさんの演出ですが、今回は、ラスト30秒アンコールではなく、ベルリオーズ作曲:「ラコッツィ行進曲」で、スタンディング・オベイションにて、終焉となりました。
小林研一郎“炎の五番!”
期日:2003年6月22日午後2時開演
会場:ザ・シンフォニーホール(大阪市)
管弦楽:ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
指揮者:小林研一郎
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調「運命」Op.67
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64
